アニメで学ぶ歴史#05『本好きの下剋上』1話~12話

こんにちは! 斜構です。

今回はアニメ『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』1話~15話を題材に歴史の知識を深めていきたいと思います。

あらすじは以下の通りです。

目覚めると、そこは本のない異世界だった――

活字中毒で本を偏愛する大学生・本須麗乃は、不慮の事故で命を落とす。それは、念願である図書館への就職が決まってすぐのことだった。

気が付くと麗乃は、貧しい兵士の娘・マインとして転生していた。そこは、魔法を持つ貴族が支配し、厳しい身分制度が存在する異世界の街・エーレンフェスト。マインは、本があれば生きていけると自分を鼓舞する。

ところが、識字率が低く印刷技術もないこの世界では、貴重で高価な本はお貴族さまのもの。兵士の娘では、とても手が届かない。どうしても本が読みたいマインは決意する。

「本がなければ作ればいい」

体力もない。お金もない。あるのは麗乃時代に読み漁った読書による膨大な知識だけ。果たして、マインは本を作ることができるのか!?マインの本を作る冒険が、いま始まる。

TVアニメ『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』公式サイト

記録技術の歴史とストーリーがリンクしている

あらすじに書かれている通り、主人公マインはどうにかして本(文字を記録する媒体)を製作しようと奮闘します。

第2話では石板、第3話でパピルス、第4話で粘土板、第5話で木簡、第7話~第8話で紙と、挑戦と失敗を繰り返します。

この流れは人類の記録技術の発達とリンクしています。

現在発見されている最古の壁画は約4万5500年前のもの、最古の楔形文字が書かれた粘土板は紀元前2850年頃のもの、最古のパピルスは約4600年前(紀元前2560年頃)のものです。木簡は殷の時代(紀元前17世紀~紀元前1046年)には使用されていたと言われています。そしては紀元前2世紀頃に発明され、西暦105年頃に蔡倫(さいりん)が製紙法を改良し実用化しました。

視聴者はマインとともに人類の記録技術の歴史をなぞっていく、という大変美しい構成になっています。

さて、第12話でマインは洗礼式に出席するため神殿に向かいます。ひょうなことから神殿の中で迷子になり歩き回っていると、偶然、図書室を見つけます。早速、本を読もうとしますが、中に入れるのは神殿関係者だけでした。マインは本を読むため、巫女見習いという選択肢を考え始めるわけですが、実際の中世ヨーロッパではどのような状況だったのでしょうか。

中世ヨーロッパにおける知的活動

『中世仕事図絵』(ヴァーツラフ・フサ編著、藤井真生訳)には、以下のように書かれています。

中世初期の知的創造活動とは、第一に教会に奉仕するものであり、もっぱら修道院と聖堂参事会学校を活動拠点としていた。文学も造形美術もこれらの施設で集中的に創り出され、その内部には写字室や書写・作画工房も誕生した。助祭や司祭の集団は、そうした空間で典礼書、祈禱書、福音書、詩篇、交誦、修道院の祈禱誓約者名簿、さらに年代記を執筆し、線画し、着色していたのである。

『中世仕事図絵』(ヴァーツラフ・フサ編著、藤井真生訳)213頁

聖堂参事会とは、聖堂に属する聖職者によって構成される組織で、教会の聖務や世俗的な業務の執行を行いました。

「祈禱」とは祈祷のことです。

交誦(こうしょう)とはキリスト教の用語で、祭壇を前にして聖歌隊を左右2つに分け、詩を交互に歌唱することを言います。

もし中世初期に転生してしまい、どうしても読書のような知的活動を行いたいのであれば、マインのように聖職者になるという道しかないようです。

しかしながら、時代とともに状況は変化していきます。

十三世紀から十四世紀にかけて、知的創造行為の領域で決定的な変化が起こった。(中略)

都市が発展し、公的生活が世俗化するにつれ、教会は芸術と知的活動の領域で独占な地位を失ってゆく。(中略)

写字生と写本彩飾師の活動も、もはや修道院や参事会、大聖堂の写字室に限定されるものではなかった。修道士の職人と同じような条件で、王宮や貴族、豊かな都市貴族のために働く俗人芸術家が増加していた。

『中世仕事図絵』(ヴァーツラフ・フサ編著、藤井真生訳)217-218頁

中世盛期~後期になると、教会だけでなく、貴族や、都市貴族(商人ギルドの頂点に立った富豪)といった人々の周囲にも、写字生や写本彩飾師の活動の場が広がったようですね。

また、12世紀以降、各地で職業教師と学生の組合が生まれ、大学へと発展していくと、注文を受けて写本を作る工房が現れました。

中世盛期~後期に転生し、かつ、読書をしたい場合は、聖職者になる以外にも富豪になって芸術家のパトロンになる、大学に入学する、写本工房に弟子入りする等々の選択肢があるようです。

なお、15世紀にヨハネス・グーテンベルクによる活版印刷術の発明以降、ヨーロッパでは紙が羊皮紙にとって代わり、安く大量の本が多くの人々に提供される時代が訪れます。

今回のまとめ

① 中世初期の場合、知的活動をするには聖職者になるしかない。

② その活動拠点は修道院と聖堂参事会学校。

③ 中世盛期~後期になると貴族や都市貴族のために働く芸術家や、大学や写本工房といった組織も現れた。

備考

文責:斜構 宅夫

本記事はブログ「異世界ファンタジー研究所」の記事を改稿・再編したものです。

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